淳(Vorchaos)
ヴォーカリスト
重さと鋭さを併せ持つ攻撃的なサウンドに、事象の持つ二面性や人間の持つ感情の渦を表現した日本語ベースの歌詞を伴い、独自のスタイルを構築するバンドVorchaos(ヴォルケイオス)のヴォーカルとして2010年より活動。
2017年キングレコードよりメジャーデビュー。以降、優れたセンスの楽曲は、映画「ヴァンパイアナイト」主題歌や、大日本プロレス岡林裕二選手のテーマ曲、「稲川淳二の怪談ナイト MYSTERY NIGHT TOUR」公式テーマソングに抜擢される等、活躍の幅を広げている。
※Vorchaos Official Websiteより一部抜粋
〈はじめに〉結成から10周年を迎えたVorchaosが昨年、稲川淳二さんとの公式タイアップ曲「MYSTERY NIGHT TOUR」をリリースした。従来のエモーショナルなロックサウンドと「抜け出そう 闇をまとう夜を越え 」と歌うVocal淳の力強く寄りそう歌声は鬱屈とした毎日をも照らし出す。
グッとくるマガジンでは淳(Vo.)に独占インタビュー。楽曲制作やライブにまつわる話をはじめ、生い立ちや歌い続けるワケなど。今まであまり語られなかった淳の人間性に迫る。
結成から10年。今、すごく生きてる実感があるんです。
結成当時のことを教えてください。
結成は2010年なんですよ。もう11年も経つんですね!
早いなぁ(笑)
元々2つバンドがあって、そこが解散して楽器メンバーがくっついて・・・ボーカルを探しているということで、僕が当時やっていたバンドのライブを観にきてくれたんです。
それで、その時お誘いを受けVorchaos誕生。2010年6月6日が初ライブでした。懐かしいですね。2012年に改めて今のメンバーに固まりました。
結成当初は意外にも全部英語詞の曲とかもあるんです。今でもライブで演奏する人気曲もありますしね。
僕が入ったときには楽曲がもうすでに何曲かあって、それを渡されて「さぁ、好きなように歌ってみて」って(笑)それが最初です。
2017年にメジャーデビューに至りましたが、それまでは、とにかくみんなに聴いてもらいたくて、ライブ会場限定で無料配布するCDを作って初ライブから、ホント何百枚配ったんだろうってくらい配りましたよ(笑)
でもその我武者羅にスタートした時期があるからこそ、今のVorchaosがあるんですけどね。
インディーズ時代も自分たちに出来ることとか、自分たちの音楽を通じて色んなことに挑戦させてもらって、楽曲も沢山リリースしてきました。
そこからです。こうしてラジオとかメディアにも取り上げていただけるようになったのは。
ミュージシャンとして生きていく。ご家族の反応は?
ヴォーカリストは、身一つで勝負しなきゃいけないし、それに生活の安定みたいなものはないですからね(笑)家族の反対みたいなものは最初からあったなぁ。反対というよりは、心配だったんでしょうね。
今は応援してくれています。なんとなく時間をかけて諦めてもらった感はありますけど(笑)
僕は独りっ子で片親なので特に、母親はきっと親戚とか周りから「淳はこの先どうするんだ」と言われていたんじゃないかな。それでもずっと見守ってくれてて。ありがたいですよ、本当に。
ただ、安定とか不安定とか、そういったところに自分自身の基準がないんでしょうね。今、すごく生きてる実感があるんです。
安定しているからどうとか、不安定な生活だからどうとかって、周りと比べればもちろん感じる時もありますけど
じゃあ自分自身どうなの?って思うと、やっぱりVorchaosでいる理由ってそこじゃないんです。
今の僕らだからこそ歌える「言葉」があると思ってます。
淳さんが大切にしている事、何かありますか。
バンドを組んだ当初って、大きい音出して、みんなでライブやって、終わったら打ち上げして、「あー楽しい」みたいな。そんなところに美学を感じてた気がします。
だけど、続けていくうちに聴いてくれてる人の事とか、一緒に自分たちと歩んでくれている人たちの気持ちを考えるようになってから
少しずつ僕の中で何かが変わってきた気がしますね。
“やりがい” にも近いのかもしれないんですが、
僕も周りの人からエネルギーをもらっているわけだし、そういう大事な人たちの為に「言葉」を届けるんだと。
そういうヴォーカリストであることに対する自覚が、僕の中でとても大切な感覚になりました。
楽曲の詞もほとんど淳さんが書かれているんですよね。
歌詞書くぞって書くこともありますけど、そんな風に歌詞を書く事はあんまりないですかね。
僕は、外をふと歩いてる時とか、電車に乗っている時とか意外と日常の中でおりてくることが多いです。
結構、前向きで周りを牽引していくような歌詞も多く書いてきたんですけど、逆に全部マイナスの感情で書いてる曲とかもあって。セカンドアルバムの「零れ星」っていう曲がそうなんですが、特に最後まで救われない曲なんですけど(笑)
マイナスな事の方が、良い事より自分の中で大きくなりがちだったりするじゃないですか。そういう感情が吐き出せる曲が欲しくて作りました。
前向きな言葉ばかりでは表現できないこともあると思うんです。
でも、そういった時期、曲があったからこそ、 “ありがとう” という気持ちを込めた曲にもっと深い意味が生まれるんじゃないかなと思って、素直な気持ちで書いたのが、メジャーデビューアルバム「Vorchaos」の「遠く…」ですね。
シャウトしている時も、バラードを歌っている時も、両方僕自身です。
バンドが成長するにつれて、楽曲の曲調の振り幅も大きくなっているように感じますが、ファンの反応はどうですか?
新曲を出すたびに毎回ちゃんと届くかなってドキドキしてるんだけど、
確かにちょっと前に比べると以前のメタルサウンドに加えて、メロディアスというか、聴きやすいと思ってもらえるような曲も増えてきたと思いますね。
さっきの話と重複するかもしれないんですが、僕は「言葉を伝える」ということにすごく意識を持っているんです。
だから、Vorchaosのメタルサウンドが好きといってくれる方ももちろん多いけど、じゃあその次の新曲がすごくキャッチーな曲だったからと言ってファンが離れているとは思わない。
長くバンドをやってきて、曲調に左右されない僕らからの「言葉」というものも僕たちとファンの関係を繋いでくれていると信じています。
実はコロナの自粛期間、ライブができなくてどうしようかと考えた時もあったんですが、無観客ライブを観てくれている方もコメントで参加ができるような形にしたりと、メンバーと試行錯誤して開催する中で、
そういった活動もファンのリアルな声を近くで直接聞けるすごく良い機会になったんですよね。
そこでまた、自分自身の存在意義とか。
まぁ、生きがいみたいなものをファンとの関係性の中で教えてもらえているのかな。
メンバーと、そしてファンと一緒に作り上げていきたい
ボタン一つで拡散できる世の中だからこそ、アナログというか・・直接温度感を持ってコミュニケーションが取れる場所を大切にしたいと思います。
デジタルがダメとか、嫌いって事じゃなくて、ちゃんとそういう人と人の繋がりの根っこみたいなところを大事にしたいなと思ってる。
だから、ライブ配信やコメントで直接ファンともコミュニケーションとるし。
遠くの高いところにいるロックスターになりたいんじゃなくて、そばにいてみんなと同じステージの上で歌っているような。そんな存在でありたいなと思います。
今年はより一層深く、ファンとの信頼関係みたいなものを構築していきたいし、そういったことが叶う企画も僕たちはどんどんしていかなくちゃいけないなと思ってます。色々やってみて、ダメだったらまた新たにチャレンジすればいい。
いっぱい僕らにアクセスしてもらって、みんなの声を聞かせて欲しいなと思ってます。
曲に関しては、新曲も準備してるし、
もちろんこれからも良いもの届けていけるっていう自信があるから、それも画面を通して伝えられる環境っていうのも整えていきたいですね!
▶︎PGS公式モデルとしても活躍中★淳 公式Instagram
最後に、淳さんにとってミュージシャンの極意とは
僕らも、もう若手とは言えないところにきている今だからこそ思うことなのかもしれないけど、
物事の正解を決めちゃうと簡単なんだけど、本当にそうなの?何でそうなの?とかね、自分の中の自分をどんどん突き詰めてくと言うことが、僕の極意かな。
これはこうだ。とか、これはこうあるべきだ。みたいなものに囚われない、決めつけない。自分で感じることを信じて表現する。
一言でなかなかまとめられないんだけどね(笑)
自分らしさとか、自分に対しての印象なんて周りが勝手に決めてくれてる事だから、それはそれでみんなに任せて拘らず
歌うこととか、表現することのフィールドの中で自分自身のパフォーマンスに対する追求っていうのは、もうやめる事はないでしょうね。
僕自身は、ヴォーカリストとして自分の追求するべきものをとことん追求して、それで“素直”に歌う。
楽曲の鋭さの中にもあたたかいものを感じてもらえるように、これからももっともっと、みんなのそばで歌い続けていきたいと思います。
〈おわりに〉インタビュー中に垣間見ることの出来た、普段のライブパフォーマンスからは想像しえない人間らしい一面が、ファンの心を捉えているのだろう。
結成11年目を目前に、まだまだ進化するVorchaosに注目したい。
取材:Noriko Shimada