山本 楓(やもまと かえで)さん
北海道出身、都内在住。
グラフィックデザイナーとして、会社員として働く傍らで声優を目指し、2017年に声優専門学校に入校。
その後、学校主催のオーディションで合格し、現在、プロダクションの養成所で所属に向け日々修練に励む。
現在、グラフィックデザイナーとして勤務されながら、声優を目指していらっしゃるということですが、まず、現在の職業に就くことになった経緯から教えていただけますか。
私には、小さな頃から好きなことが二つありました。
まず一つ目は、歌を歌ったり、音楽を聴くこと。
二つ目は、絵を描くこと。
この二つが単純に好きで、具体的に職業として考えていたわけではありませんでした。
しかし、中学生の時に両親から、「将来、何かやりたいことはある?」と聞かれた時に、親の反応を探るつもりで、「私、歌を歌うの好きなんだよね。」と、話してみたことがあったんです。
それを聞いた両親は、「そういう人になれるのはほんの一握りなんだよ。」と、難しさを教えてくれようとしましたが、私も真剣に考えて決意していたわけではないので、「そうだよね、全然そんなつもりないよ」とあっさり話を終えて、歌手は憧れとして胸に収めることにしました。
次に好きだった絵についても、職業としての絵描きにはなりたくありませんでした。
でも、絵描き以外で、絵にまつわる職業としてどんな仕事があるのか知らなかったんです。
そのときに母が「13歳のハローワーク」という本を買ってくれました。
その中でデザイナーという職業があることを知り、「これだ!」と思った私は、両親にデザイナーを目指すことを話しました。
それから4年制の大学でデザインを勉強し、縁あって現在の会社に入社が決まったのです。
現在の職業が昔からの夢だったのですね。その夢を叶え、実際にデザイナーになってみて、想像と違った部分などはありましたか?
大学を卒業し、新卒で現在の会社に入社しましたが、デザイナーという職業は服装が自由なこともあり、入社当初は学生の延長線上という感覚がありました。
また、大学での経験が濃かったこともあって、始めは仕事でのメリハリのつけ方に苦戦しましたね。
そこから1年くらいで、締め切りや納期に追われながら仕事を覚え、慣れ始めて、もっと色々なことをやりたいと思うようになりました。
というのも、現在の仕事はグラフィックデザインと言って、平面で情報を伝えるお仕事なんです。
私の会社は冊子をメインに取り扱っている会社で、例えば、企業の株主様向けの会社案内など、少し固い内容をかみ砕き、デザインで魅せるという仕事になります。
しかし、私が学生時代に専攻して学んだデザインは、プロダクトデザインというもので、机や椅子、文房具などのモノをデザインする内容だったんですね。
そのため、会社とは別の所で、自分のやりたいことを突き詰めようと、趣味でプロダクトデザインのコンペに応募しました。
その応募したコンペで賞をいただくことができたのですが、その時点で自分の力を出し切った感覚があり、私自身も満足してしまいました。
簡単に言うと、飽きちゃったんです(笑)。
それが入社から2年目のことで、他のやりたいことを始めるなら、このタイミングじゃないかな、と声優の学校へ通うことに決めました。
歌手ではなく、次の道は声優だったのですね。なぜ声優だったのですか?
小学生くらいの時に、『カードキャプターさくら』というアニメが大好きで、魔法使いになりたいと思っていました(笑)。
そのアニメの3クール目ぐらいで主題歌になった曲が好きで、調べると、坂本真綾(さかもと まあや)さんという方が歌っていることが分かりました。
それから坂本さんについて調べると、歌手ではなくて声優さんだということが分かって、
「声優さんてすごい!歌も歌えるんだ!」と、感動したんです。
それからもずっとアニメが好きで、
「たった一度の人生だから、本当に自分のやりたいことに挑戦したい。」
「やり尽くしたい。」
という思いから、声優の道を選び、専門学校に通うことにしました。
両親には、一度「狭き門だ」と言われたこともあり、内緒にしようかすごく迷ったのですが、すべての書類を揃えてあとは判子を押すだけ、という段階で話したんです。
すると、自分の収入の中でやりたいことに挑戦するのだったら頑張りなさいと、今度は背中を押してくれました。
専門学校に通われ、技術面を習うことはできるのでは?と思うのですが、なぜ、グッドボイスアカデミーに通おうと思われたのでしょうか。
専門学校に通って、半年ぐらいしたときに、学校主催のオーディションがあり受けることになりました。
そのオーディションに合格すると、プロダクション直属の養成所に入れるのですが、私はそこで合格し、養成所に入ることが出来たんです。
しかし、専門学校で習った技術を自分に落とし込み、習得するには至っていない状態でした。
また、入った養成所というのは基本的なことを習う所ではなく、自分で演技プランなどを考えて、一週間の成果を見せる場所なので、演技プランなどへの意見やアドバイスはくれますが、基本的なことは教えてくれません。
そのため、自分では腹筋を使えているつもりでも、本当にあっているのか自信がなかったり、何となくで進めていたりしたことがあっても、その疑問を解決することができない状態でした。
そんな中、勤めいている会社が毎年参加している企業イベントがあり、私の会社もブースを出すことが決定しました。
そのブースのMCを、一昨年くらい前からお願いしていたのが、YAYO先生でした。
会社には、私が声優を目指していることも伝えてあったので、タイミングが合えば、私がブースのMCを担当する予定だったのですが、養成所のスケジュールとあわず、今回もYAYO先生にお願いすることになったのです。
その後、YAYO先生と面識のある会社の先輩が、YAYO先生とお会いする席を設けてくださり、そこで初めてお会いすることができました。
その場で、私のやっていることを話すと、「なんでも聞いていいよ!」と言ってくださり、悩んでいたことを相談すると、一瞬で解決したんです。
これまで1年くらいずっと悩んでいたことが一瞬でした(笑)!
さらに、「そんなに悩んでいるんだったら、わたし先生してるから来なよ!」と、お誘いいただいて、レッスンへ通うことを決めました。
入会されてまだ2ヵ月ということですが、変化を感じることは何かありますか?
入会前に、会社で動画のナレーション募集の案件がたまたま入ってきて、ボイスサンプルを提出したところ採用されたんです。
そのタイミングで入会したので、時間がない中で実際の案件に向けたレッスンを行っていただきました。
腹筋の使い方から、滑舌の苦手部分の克服法、またナレーションの現場でのことなど、現役のプロならではの助言もいただいています。
今は、声を作る土台の部分を中心にトレーニングをしていますが、どこをどう使うのか、体の使い方のイメージも、分かりやすく指導していただいたことにより具体的になりました。
その結果、無意識で内にこもってしまっていた声を、「前に出す」という感覚をつかむことが出来ました。
おかげで今では居酒屋の店員さんを必ず捕まえられます(笑)。
また、養成所では演技をすることが多いので、出た課題に対して、どういった声を作り出していくのかという相談にも乗っていただいています。
演技では、声を作らないといけませんが、ただ作るだけではダメで、そこに感情や表情も乗せられるような声でなければいけません。
だからこそ、現在の土台作りの部分はとても重要で、習うことが出来て良かったと思います。 自分のやり方のみで答えを見つけようとしていたら、きっとグダグダになっていたと思いますね。
YAYO先生についてはどんな印象ですか?
初めてお会いした時は、良い意味で「強そうだな」って思いました(笑)。
こういう声を使ったナレーションやMC、声優というお仕事は、自分に自信がないともらえないと思います。
その点、YAYO先生はとてもポジティブで、「こんな人に仕事が集まってくるんだろうな」、「じゃ、自分もこうなればいいんだ!」と、私も自分に自信を持つということに踏ん切りがつくようになりました。
お手本となる方が目の前にいてくださることによって、目標が明確になります。
YAYO先生はそういう点でも、今、私の目標とするべき存在です。
これから声優を目指しているという山本さんだからこそ、あえて聞きたいのですが、もし、声優業が上手くいかなかったらどうしますか?
私の座右の銘は、ありきたりですが、「継続は力なり」です。
これまで私はデザインの道でもそうでしたが、昔から、うまくいかなくても一度始めたら諦めない、と決めてきました。
ずっと何かを続けていれば必ず、見てくれている人がいます。
そのために今は種を蒔く時期だと思っているので、色んな方とつながり、良い関係性を築いて、続けた先の将来につなげていきたいと思います。
また、声優についてはとにかく私が楽しくてやっていることなので、うまくいく、いかないに関わらず、結果が出るまでやり続けていきたいです!
ありがとうございます!この質問は怒られるんじゃないかと内心ビクビクしていました(笑)。それでは、最後の質問です。将来、どんな声優さんになりたいですか?
単純にストーリーの一部になるのではなく、私が声優をすることで、そこからさらに想像が広がるような、そんな声優になれたらと思います。
声優って娯楽なので、べつになくてもいい存在なのかもしれないですよね。
でもその仕事がある理由は、見てくれている人がいるからで、その見てくれている人の世界観を、私の声で、さらに広げることができたら嬉しいです。
今はまだ、所属を目指す段階なので、ひたすら種を蒔いて、この先につながるよう、そのひとつひとつを大切にしていきたいです。
取材・文:Koh Yamasaki